INTERVIEW インタビュー

脚本・古橋秀之先生/作画・別天荒人先生
オフィシャルインタビュー

――「相澤学生編」を描くことになった経緯を教えてください。また描くこととなった際の心境や、どんな意気込みで執筆されたか教えていただきたいです。

古橋:『ヴィジランテ』の原作コミックの連載中に、相澤の過去を描くということが決まりました。
前提として、『ヴィジランテ』には第2シーズンと第3シーズンという原作内での仕切りがあります。
第2シーズンは航一が大学1年生の終わりくらいの時期、第3シーズンは4年生の春くらいという設定で、その間に2年ほど時間が空くんです。その第2シーズンから第3シーズンに移る時期に、相澤が鳴羽田を去るエピソードを入れておきたかったんです。
キャプテン・セレブリティや相澤などプロヒーローが去った後、航一が1人でヴィジランテ活動をして、至らないながらも2年間、鳴羽田を守り続けていたという形にしたかったので、相澤が一度退場するというエピソードが必要でした。
そこでエピソードの素案を堀越先生に投げたところ、堀越先生の方から、「相澤の過去については自分の方でもアイディアがあるから、それと絡めてくれないか」とお返事があり、そこで初めて「相澤には学生時代に実はこういう親友がいて……」という構想を伺いました。「ではそっちでやりましょう!」となり、相澤の過去のエピソードを『ヴィジランテ』に組み込むことになりました。

――「相澤学生編」を描くこととなった際の心境や、どんな意気込みで執筆されたか教えていただきたいです。

古橋:大きい仕事がきたなと。
ヴィジランテは外伝という立場なので、本編と密にリンクすることで、読者の方にも「ヒロアカの世界の一部なんだ」と強く認識してもらえるチャンスだと思い、頑張りどころだなと気合が入りました。

別天:僕も話を聞いた時は「おお、やるんだ!」という感じでしたね。白雲というキャラクターについては「なるほど」と。やることは決まっていたので、目の前の仕事をしっかりやろうという心境でした。

――「相澤学生編」を描く中で、意識されていた点や、苦労した点はどんなところだったでしょうか。

古橋:脚本的には、重い結末があるからこそ、逆に「輝かしい青春時代」を徹底的に描こうと意識しました。相澤は、本編では頼りになる先生なので、その相澤が未熟だった時代を描いて、そこから今の相澤に至る大きなきっかけとなるエピソードになるように描きました。

別天:ビジュアル面では、雄英高校周りの描写が大変でしたね。堀越先生も連載中でお忙しいので、いちいち細かい設定を聞くわけにもいかず、原作のコマから推測して描く部分もありました。

――「相澤学生編」で閃走寺というキャラクターが相澤たち絡んでいたと思うのですが、このキャラクターの誕生の経緯があれば教えてください。

古橋:アメリカのドラマなどに出てくるいじめっ子の典型というイメージで作り上げていました。
自分の中では割と好きなキャラクターです。

別天:古橋さんの方から典型的なジョックスという設定をいただいていたので、それに合う形で考えていきました。なんとなく“ヒロアカ”の青山くんに似た“個性”なのかなと思っていました。

――原作コミックスの「THE・裏話」にて白雲の設定は堀越先生の構想を起点に、何度かやり取りを重ねて形を整えていったと語られていましたが、印象的な堀越先生からのフィードバックはありましたか。また何を参考に、学生時代の彼らを立ち上げていったのでしょうか。別天先生は、特にヒーローコスチュームでのキャラクターデザインで参考やヒントにしたものなどがあれば教えていただきたいです。

古橋:白雲のキャラクター像については、堀越先生から「天喰に対するミリオのような存在」と言われたので、そんなところをヒントに立ち上げていきました。白雲がすぐ裸になるところなんかもミリオからいただいているところです。

別天:白雲のヒーロースーツについては、「クラウド」という“個性”から「孫悟空」っぽいイメージでというアイデアを古橋先生からいただき、そこから膨らませていきました。
相澤やマイクについては、“ヒロアカ”本編のデザインに至る前の「前身」というか、アーリーデザイン的な雰囲気になるように試行錯誤しました。

――アニメで描かれた「相澤学生編」をご覧になられてどんな印象を抱きましたか。

古橋:思った以上に「エモい」というか……演出が素晴らしくて、グッときましたね。
細かい演出も盛っていただいており、力の入れようが伝わってきました。

別天:戦闘シーンにも力を入れてやっていただいたなという印象でした。
原作をもとに奥行のある形で前後の動きを補完し、納得できる流れにしていただいたので、監督をはじめとしたアニメーターさんの仕事のすごさを感じました。

――アニメを観て改めて、天気の描写が印象的だなと思いましたが、どのような意図がありましたか?

古橋:ヴィジランテは要所で月や夜のシーンが入ります。「相澤学生編」に関しては、白雲がいる時は光が差し込み、彼がいなくなると雨が降り出すという対比を意識しました。「学生時代に降り始めた雨の中を、『ヴィジランテ』時代の相澤はずっと生きてきたんだ」というイメージで描いていました。

――「相澤学生編」のラスト、ほっぱ~ずの面々とコーイチがキャットカフェの構想を練っている様子に、相澤が過去の自分を重ねていたシーンも印象的でした。相澤にとってこのシーンはどんなシーンだったのでしょうか。また相澤がコーイチから影響を受けている部分はあるのでしょうか。

古橋:ありがとうございます。相澤が鳴羽田を去るきっかけとなるエピソードなので、相澤の心の中で何かが少しだけ片付いて、雄英の教師になることについて少し前向きになっていく様子を描ければというところでした。相澤とコーイチの関係については、コーイチは“ヒロアカ”での相澤が受け持っている生徒とは違い、大学生ではあるので、ヴィジランテ活動を認める訳にはいかないけど、危なっかしいから見ててやろうという距離感なんだと思います。その中で、それなりに成長していくコーイチを見て、危なっかしいことをしてるやつは絶対に止めるし、俺が傷つけばいいんだというモードから、危なっかしいことしてるやつが成長するのを助けるというスタンスにしてもよいんじゃないかと思わせるきっかけになったのかなと思います。コーイチ自身が相澤に対してなにかしたわけではないですが、『ヴィジランテ』時代の相澤から“ヒロアカ”本編の相澤への変化を促す形になったのではないかと。

――「相澤学生編」をはじめ、『ヴィジランテ』をご視聴いただいた皆さまへメッセージをいただきたいです。

古橋:本当に良いアニメにしていただきました。1本の独立したアニメ作品としても面白いので、ぜひ見ていただきたいです。この「相澤学生編」をきっかけに『ヴィジランテ』本編の方にも興味を持っていただけると嬉しいです。

別天:「相澤学生編」を入り口にして、“ヒロアカ”本編と『ヴィジランテ』、双方向にいい影響があるといいなと思っています。実は『ヴィジランテ』だけを楽しんでいるというファンの方もいらっしゃると思うので、そういう方には、『ヴィジランテ』をきっかけに“ヒロアカ”にも触れていただけたらと思います。