INTERVIEW インタビュー
音楽 林 ゆうき/山城ショウゴ/古橋勇紀
オフィシャルインタビュー
――"ヒロアカ"公式スピンオフシリーズとなる『ヴィジランテ』に関わることが決まった時の感想を教えてください。
山城:もともと"ヒロアカ"のファンだったので、すごく嬉しかったのと同時に、恐ろしさみたいなものがこみ上げてきました。「とにかく全身全霊で挑まないといけないな」という気持ちになりました。
古橋:僕も同じ気持ちです。"ヒロアカ"で林さんが完璧に世界観を作り上げていたので、とてもプレッシャーを感じました。頑張って良いものを作らなければと思いましたね。
林:僕としては、"ヒロアカ"からどう色味を変えようかということを最初に考えました。せっかく3人で担当するのだから、それぞれの良いところを出し合って制作できたらいいなと。"ヒロアカ"にはなかった体験になるので、どんな化学変化が起きるかという楽しみが大きかったです。
――原作コミックやアニメのシナリオ等をご覧になって、作品のどんな部分に面白さを感じましたか?
古橋:コミカルとシリアスの振れ幅がとても大きいという印象で、そこが物語の深みに繋がっていて、ストーリーに惹き込まれてあっという間に原作を読み終えてしまいました。
山城:僕はまず、航一の“個性”が面白いと思いました。第1話の冒頭から四つん這いになって街を這いずり回っていて、「なんだこの主人公は!」と。しかもこの世界線では、公共の場で許可なく“個性”を使用することは禁止されているじゃないですか。1話から法を犯す主人公なんて、なかなかいないですよね(笑)。しかし、そういった世間的なルールや体裁を無視してでも「人を救けたい」と思っている部分に魅力を感じました。
林:コミカルなシーンが多く、そこが"ヒロアカ"のオリジナルストーリーに似ていると思いました。しかし、後半に進むにつれてカタルシスがどんどん高まっていくので、音楽面でどう変化をつけるべきか考えなければいけない作品だとも思いました。
――今回、どういった経緯で3人で音楽を担当されることになったのでしょうか。
山城:もともと私と古橋さんが林さんのアシスタントをやっていたご縁で、声を掛けてもらいました。制作に入っているgroundinglabの島津真太郎さんが本作の話を受けた際に、"ヒロアカ"がヒーローの物語なのに対し、『ヴィジランテ』はヒーローと非合法ヒーローのお話という点を音楽に重ね、音楽も"ヒロアカ"を担当する林さんにプラスするかたちで進行したいというアイディアをお持ちで、デモを作る機会をいただきました。それを林さんに聞いてもらった時に「悪くないじゃない」と言ってもらえて、それで僕も制作に加わることになりました。
林:僕自身も"ヒロアカ"とは別軸のお話ということもあって、新しい世界観や手触りみたいなものを加えたいと思っていました。でも、流派が違ったり、自分のやりたいことを理解してくれない作家さんだとまた別の問題が出て来てしまうと思い、「信頼できる面白い作家は誰だろう?」と考えた時に2人の持ち味が『ヴィジランテ』に当てはまると思い、お声掛けさせてもらいました。
古橋:互いに何が得意か、1番強みが出せるのはどこかを理解していたので、楽曲においての役割分担みたいなものはすぐに決まりました。
――その持ち味、得意分野とは?
古橋:林さんは皆さんご存じの通り、スピーディーなリズム感と心に訴えかける素晴らしいメロディーが持ち味です。ショウゴさんはオシャレでスタイリッシュな中に、作品全体を包み込むような雰囲気を感じさせるのが特徴。僕は結構“えぐみ”の強いものが得意なので、3人それぞれ面白いものを提供できたのではないかと思っています。
――3人で制作してみていかがでしたか?
山城:林さんが航一、僕がナックル、古橋さんがポップのテーマやメロディーを主に担当して、それを交換して自分の要素を加えたりして、「あれいいね、これいいね」とやり取りしながら作っていく過程が楽しかったです。
林:僕自身も2人にも、得意分野以外のこれまで作ったことのないジャンルにもトライしてもらった曲もあります。
古橋:相乗効果で、とても良いものができたと思います。
――アニメ制作サイドから受けた要望や、作っていく上で特に意識したことは?
林:音響監督の三間さんから、「"ヒロアカ"の高校生主人公とは違って、今回は大学生。さらにイリーガルヒーローということで、年齢層高めというか、ちょっと大人っぽさを出した感じにしてほしい」という話はありましたね。
山城:"ヒロアカ"本編の音楽を使用するとも聞いていたので、大前提として、林さんが作り上げた"ヒロアカ"の世界観から逸れ過ぎないことを1番意識しました。打ち合わせで言われた中で印象に残っているものがあって、「“自分にとってのヒーローとはこれだ!”と投げかける力がほしい」という言葉です。1度諦めた人間が再び立ち上がる「泥臭さ」みたいなものが出せるといいなと思いながら作りました。
古橋:僕もその「泥臭さ」という言葉と、また「ジャズの成り立ちを感じる雰囲気がほしい」と言われたことを覚えています。画面的に夜などの暗めのシーンが多い作品ということで、それに合うようなテイストを探しました。
――『ヴィジランテ』ならではの音楽の作り方や、チャレンジしたことなどはありますか?
林:"ヒロアカ"と明確な差を付けたという意味で、高揚感を出しすぎないようにしたのが『ヴィジランテ』ならではの部分です。ただ、先ほど言ったように後半にかけて物語のカタルシスが高まっていくので、自ずと音楽もバージョンアップさせていこうかと思っています。
古橋:チャレンジとしては、全員が3人でコライトするのが初めてのことでしたよね。メロディーをもらって自分の要素を足して返して、その逆もあったりして。そういった作業はやったことがなかったので、とても新鮮でした。
山城:僕個人としては、この作品に参加することからチャレンジでした。アニメ作品の楽曲を担当するのは初めてで、しかも大好きな"ヒロアカ"のスピンオフ作品。影響を受けた作品のスタッフの一人になれるなんて、本当に光栄なことです。チャレンジであり、チャンスだと思いました。
――"ヒロアカ"同様に、熱いシーンや名セリフが続々登場する作品です。物語の中で、「これは熱い!」と感じたシーンやセリフがあれば教えてください。
林:"ヒロアカ"の文化祭で爆豪勝己や耳郎響香たちがバンドを組んでライブをするシーンがありましたが、『ヴィジランテ』でも同じくキャラクターたちが歌って踊るライブシーンがあります。その楽曲はどんなものにしようか、"ヒロアカ"で披露した「Hero too」とどんな違いを出そうかなど、音楽制作において熱く考えるシーンでした。
山城:僕は、ナックルの「俺がいる」というセリフがとても好きです。劇中、何度も出てくるのですが、文脈によって大きく意味が変わる素敵なセリフだと思います。これを聞いた後にオールマイトの「私が来た」と聞くと、なぜか押しつけがましい言葉なように感じて(笑)。プロヒーローではなく、ヴィジランテだからこそ言える強くて優しい言葉な気がして、いつか自分も誰かに言ってみたくなります。
古橋:僕もナックルの「成すべきことを前にした時 行動を起こせるか否か!! ヒーローの魂に問われるのはただその一点のみ!!」というセリフが印象に残っていて、それを聞いた航一の思いが爆発するシーンに胸が熱くなりました。
――本作の映像を観られての印象はいがですか。
山城:絵のタッチや色味が『ヴィジランテ』の世界にマッチしていて、とても興奮しました。ネオンな雰囲気もあって、言うなれば“夜のヒロアカ”みたいな。自分がやりたいと思っていた作品のイメージそのままで、音楽家として関われたことに改めて嬉しくなりました。
古橋:第1話の最初に「歯が命イイイ!」と言っている敵(ヴィラン)が出てくるのですが、原作よりも色濃く脚色されていて、「アニメの表現だとこうなるのか!」と驚きと感動がありました。
林:その映像の裏で自分の作った音楽が流れているのを聞くと、やはり感激してしまいます。第1話の冒頭では"ヒロアカ"の音楽が使われていて、きっとファンの方に説明する意味で使用してくださったのだと思いますが、それもありがたかったです。これから2話、3話と続いていく中で『ヴィジランテ』特有の楽曲もたくさん流れます。その楽曲から作品のコンセプトや色味を感じ取っていただけたら嬉しいですね。
――「ぜひ聴いてほしい」という楽曲はありますか?
林:劇中に登場する「マルカネ百貨店」のテーマを作ったのですが、昭和を感じられるCMソングになっていて、今回の楽曲制作において1番楽しい時間でした。監督たちから「耳から離れない」との言葉もいただき、お気に入りの楽曲となっています。
山城:思い入れがあるのはナックルの楽曲なのですが……でも全部が気に入っているので、全曲聞いてほしいです。
古橋:僕も全部気に入っているのですが、1つ挙げるとすれば、特訓を想定した楽曲。ぜひ特訓中に聞いてもらえたらと思います。
――放送を楽しみにしている視聴者へのメッセージをお願いします。
山城:僕自身も一視聴者として『ヴィジランテ』という作品を楽しめたらと思っているので、「一緒に楽しみましょう!」というのがメッセージですね。
古橋:『ヴィジランテ』のことを思い考え、3人それぞれの色を混ぜ合わせた良い楽曲が出来上がりました。アニメーションと一緒に、楽曲も楽しんでください。
林:先ほど紹介した「マルカネ百貨店」のほか、ポップがアイドル活動中に歌っている楽曲も作らせてもらいました。原作を読んで「これはどんな歌になるんだろう?」と気になっていた方も多いと思います。イメージを膨らませながら、放送で披露されるのを楽しみにしていてほしいです。
▼本予告はこちら