INTERVIEW インタビュー
No.6役・八代 拓
オフィシャルインタビュー
――謎に包まれていた“傷顔の男”ですが、ここに来てようやく「No.6」という名前が判明し、思惑も見えてきました。物語のカギを握る重要なキャラクターですが、演じることが決まった時のお気持ちを聞かせてください。
八代:“僕のヒーローアカデミア”という偉大な作品の前日譚ということで、参加が決まった時はとても嬉しく光栄に思いました。演じるNo.6はどんな役だろうとワクワクしながら原作を読み始めたのですが、なかなか出てこず……。ちょっと出てきたと思ったら、すぐ姿をくらますし(笑)。ポジションとしては、作中で巻き起こる事件を裏で操っているフィクサーのようなキャラクターなので、収録がすごく楽しみになったことを覚えています。

――物語についてはどのような印象を持ちましたか?
八代:“ヒロアカ”に登場するお馴染みのキャラクターたちが出てくるというのは間違いなく魅力の一つになっていると思いますが、『ヴィジランテ』という作品自体は、“ヒロアカ”とは違う空気感をまとっていますよね。真っすぐ純粋な王道少年漫画だとハッキリ言い切れる“ヒロアカ”に対して、『ヴィジランテ』はなんだか色合いが曖昧な気がします。
“無個性”だったけれど最強の“個性”を授けられたデクに対して、コーイチくんは“個性”を持って生まれたけれど「滑走」という地味なもの。何事にも自信がなさそうで、敵に立ち向かう時もへっぴり腰になっていたり、王道のヒーローではない。でも「人を助けたい」という思いはあって、「人を助けることに免許は必要なのか?」というヒーロー制度の根幹を描いているところがとても面白いと思いました。
――八代さん自身は、ヒーローでもヴィランでもない“ヴィジランテ”という存在をどう思いますか?
八代:一番リアルな存在だと思います。作品で描かれるヒーローって、どこかロマンや夢があって「こうありたい」と理想は抱くものの、なかなかたどり着けないじゃないですか。できることの限界もありますし、単純な善悪では割り切れない部分もありますし。でも、心のどこかで「自分が救えるなら救いたい」と思っていて、その等身大の感覚が、ヴィジランテという存在なんじゃないかなと思います。どこか現実の世界にも通じるものがありますよね。
――そんなヴィジランテやヒーローたちと敵対するNo.6。彼をどのようなキャラクターだと捉えていますか?
八代:ここまでのエピソードを振り返ってみると、「能力を持ってしまった子供」だと思っています。悪いことをしているけれど、とてもピュアなんですよね。複雑な感情はまったく持っていなくて、「こうなりたいから」「すごく楽しいから」と単純な理由で動いている。その純粋さがこの物語の残虐さに繋がっているので、あまり良い意味ではない方の「純粋な子供」らしさを感じます。

――演じる上で意識したことはありますか?
八代:今言った“純粋さ”みたいなものは、やはり意識しましたね。声や立ち姿は大人だけど、子供っぽさを出すことを念頭に置いて演じていました。「こいつを倒す」や「俺が正しいと示す」という決意が前に出ることもあるのですが、それ以外のほとんどの部分は「楽しい」「気持ちいい」など素直な感情を表現する感じですね。No.6の表現は、そこに尽きると思います。
――以前にコーイチ役の梅田さんにインタビューした際、八代さんは音響監督の三間さんとディスカッションしながらキャラクターを作り上げていると言っていました。どのようなやり取りがあったのでしょうか?

八代:僕が作った感情のラインに対し、三間さんが「ここでこのニュアンスを足してみてよ」と要素を加えてくれて、そのイメージに合うように調整していった感じです。三間さんは、No.6を“人間として成立しないキャラクター”にしてくれたような気がしていて。僕が最初に作っていったNo.6は、まだ人間が表現できる範囲の感情のラインで動いていました。それに三間さんが演出をつけると、人間の考えに収まらないところまで持って行ってくれるんです。僕自身の表現の幅も広げてもらえたので、毎回のアフレコがすごく楽しかったですね。
――ここまで鳴りを潜めていたNo.6ですが、第2期後半で感情や目的が見えるシーンが増えました。三間さんの演出によって「特に振り切って表現できた」と感じるシーンはありますか?
八代:第23話でコーイチやキャプテンを観察しながら発するセリフは「悦に入って歌い上げちゃってもいい」というディレクションが入りました。しかし「そこまでやっちゃっていいんだ!」と思って本番でやってみたところ、「ニュアンス的にはそういうことなんだけど、何を言っているかわからない(笑)」と言われて(笑)。それじゃダメだと思って録りなおしたのですが、オンエアで実際に使われたのは、最初に録った方でした。確かに言葉として伝えることは大事なのですが、あのシーンでNo.6の感じていた気持ちよさを伝えるには、呂律も回っていないくらいの勢いが必要だったんだろうなと。どのテイクを使うかという判断も的確なので、三間さんは本当にすごい方だと思います。
――25話では、ついにナックルと直接言葉を交わします。これまで一方的に語ることが多かったNo.6ですが、掛け合いのシーンはどのように演じましたか?
八代:そうなんですよ!役を演じているのだから、誰かと掛け合いがしたかった。それがようやく25話で叶いました(笑)。ただ、それまでは一方的に表現するシーンが多かったので、「誰かと会話する時のNo.6ってどんな感じなんだろう?」と少し迷いましたね。
僕自身の感覚としては「憧れていた相手にようやく会えた!」といううれしさをイメージして演じたのですが、三間さんから「“目の前のこいつを超える”という方向にシフトして」と言われて。喜びの途中から緊迫感を匂わせ、最終的に「こいつはもう過去の人で、自分が現在なんだ」と意識が切り替わったことを会話の中で表せるよう心掛けて演じました。

――No.6の印象や、彼を表現する上で感じたものも含めて、八代さんが思うNo.6の魅力とは?
八代:演じる身として「No.6とは?」ということはすごく考えます。彼が何を考えているのか、なぜこんな行動をとるのか、悩み考え突き詰めた結果……彼の魅力を説明するのは、野暮になるような気がしました。「実は彼には彼なりの正義があって」みたいに言葉で補足してしまうと、冷めてしまうキャラクターなんじゃないかと思うんですよね。
もし彼に魅力を感じる方がいたら、それはとても嬉しいです。でも同時に「この物語の中で、そもそも彼の魅力をあえて言語化する必要があるのかな?」とも思ったりして。僕自身も何となく魅力を感じる部分はあるのですが、それをあえて言葉にするとノイズになってしまうような気もするので、「もし何か感じるものがあったら、ぜひ教えてください」と視聴者の皆さんに呼びかけるに留めておこうと思います(笑)。
――ちなみに、No.6以外で八代さんが気になっているキャラクターはいますか?
八代:ベストジーニストさんです。第24話で「かっけ~!」と思っちゃいました(笑)。あの状況下でひとり冷静に指揮を執っていて、あのシーンで流れたBGMも相まって、すごく好きなキャラクターになりました。もともと、クールなのに闘志がしっかり見えるというキャラクターが好みというのもあるのですが(笑)。
24話はキャプテン・セレブリティもかっこよくて、ちょっと泣いてしまいました。彼はすごく臆病で見栄っ張りだけど、純粋な男なんですよね。愛する人のために身を投げ出す姿はとてもステキに見えました。